このセックステクニックのポイント
1.クリトリスを責めるときに引っかかりを作ることです。
2.女性にイキそうな気配があれば、そこからは愛撫の力加減、テンポ、スピード感を変えないこと
他にもいくつかの重要なポイントがあります。
プロローグ~2人の出会い~
「え……あ、はい。どうぞ」
ロックの芋焼酎のグラスがカラリと音を立てて、同時に小森ユウコは心の中でため息をついた。
彼女がこの店に来たとき、カウンターには誰もいなかったのだ。
そもそも、それを狙って街外れのバーを選んだというのに…
今日の彼女は1人で飲みたい気分だった。
仕事で失敗して傷心気味な胸中を、強いアルコールによって消毒したい気分だったのだ。
だというのに…
その男は小森の居るカウンター席へと突如として表れ、空いている隣席に座ってもいいかと話しかけてきた。カルーアミルクでもハイボールでもなく、ただ憮然と芋をあおっている女がツレを待っているわけがない。
よほど背中が寂しく見えたのだろう。
チョロそうな女だと思われたのかもしれない…
途端に自虐的になった小森は、ナンパしてきたその男を値踏みするように見る。
彼の名前は佐藤というのだそうだ。
目元の感じから、年齢は40代半ば。小森より5つか6つ年上と言った印象だった。
煙草の匂いのついた皺くちゃのワイシャツ…
ナンパというわりにオシャレのオの字もなく、どこか気弱そうな印象から、小森は身構える気力すらも湧かなかった。
だからというわけでもないのだろうが、小森は佐藤との相席を断ることをしなかった。
出会った男女が打ち解けるまで
「佐藤さんはいいですね。悩みとかなさそうで」
小森はもうだいぶ顔が熱かった。
愚痴っぽいその言葉を受けて佐藤は苦笑する。
「俺?まあないことはないけど。小森さんあるの?不満とか」
「ありますよ」
そう言うと小森は恨みがましく赤い顔を寄せて佐藤を睨んだ。
「なんで梅酒なんですか、ジュースでは酔えませんよ」
さっきから彼が口にするのは梅酒やレモンサワーばかりだ。
ナンパしてきたくせに漢気や色気のかけらもない。
それがかえって気に障った小森は非難するようにウォッカのショットグラスを押し付ける。
そして、彼女もまた喉が焼けるようなそれをぐいっと一気にあおった。
小森は見かけにもフラフラだった。
佐藤は梅酒で唇を濡らしてから口を開く。
「そんなに飲んで、小森さん明日休みなの?」
「……仕事ですよ、だから酔いたいんです」
怠そうにカウンターに突っ伏しながら小森は不機嫌な声で唸った。
「今日会社で思いっきり失敗しちゃって。だから本当は飲んでいる間だけは誰にも邪魔されたくないんですよ!冷静になっちゃうから……」
酒臭い二日酔いのままで出社したらどれだけ怒られるだろうか?
小森はふとそんなことを思ったが、すぐさま忘れるように2杯目のショットをあおった。
「今日はすべてを忘れたいんです。だから、もっと佐藤さんも飲んで一緒に酔っぱらってくれないと困るんです」
「もしかして小森さんって面倒くさいタイプ?」
彼女はすでに呂律が回っていなかった。
その一言にキョトンとした小森は急に背筋を伸ばして、温くなったチェイサーの水を口に当てる。
「それ彼氏にも言われたなあ……面倒くさいって。もう元カレだけど。最近別れちゃって。フラれて……」
昔の恋人を思い出した瞬間、小森は感情と共に涙があふれてきた。
アルコールで麻痺して緩んだ脳からは、あらゆる感情が溢れ出てくる。
(もう忘れようって決めたのに…)
暗くなった気持ちを一掃するために、小森はロングカクテルを注文する。
そして、それを半分ぐらいまで一気に飲み干すのであった。
小森はストレスの解消の仕方を他に知らなかったのだ。
趣味と呼べる趣味はなく、家に帰っても1DKのマンションの一室には迎えてくれる人もいない。
仮にいたとしても、いや恋人がいるときでさえ、彼女は彼女はセックスでイクことが出来なかった為に、余計にフラストレーションを溜めた。
挙句に、今度は仕事でのトラブルだ。
普段は絶対にしないような些細なミスを迂闊にも犯してしまった。
独りになりたいという気持ちと誰かそばにいてほしいという気持ちの二律背反。
小森は今にも消えてしまいたかった…
女性にセックスを意識させるかどうかは男性次第!
気が付くと、小森はぐったりと佐藤の肩にもたれながら暗い夜道を歩いていた。
冷たい夜風が目に染みる。
頭が痛い、それに口の中も酸っぱい。
既に何度か吐いていたのだろう。
胃が焼けるようにムカムカとしていた。
しかしそれ以上に、ナンパしてきたくせに一向に口説いてくる気配のない佐藤に小森はムカついていた。
「わたしってそんなに魅力ないですか」
ぽつりと呟かれた言葉に、佐藤は彼女の顔を覗き込んだ。
笑ってやるには深刻そうな顔だった。
「え?」
「面倒な女は嫌いですか?重そうだとか、執着されそうだからっていい人ぶって避けてるとか?わたしだと駄目なんですか?」
「どうしたの急に?まだ酔ってるの?」
「そうですよ酔ってますよ!佐藤さんはなんでナンパしてきたんですか?酔ってるのに、どうして襲ったりしないんですか。やっぱり魅力がないから?」
「ナンパって」
心なしか小森の声はどこか怯えているようでもあった。
何かを恐れているような、どこか怖がっているような、そんな声。
なにも小森は、冴えない佐藤にセックスを期待していたわけではない。
ただ彼氏にフラれてポッカリと空いた心の穴を埋めてくれる存在を求めていただけだ。
女性としての価値をひたすらに肯定してくれる男の存在を望んでいただけだ。
小森はただ人肌のぬくもりが欲しかったのだ。
今、あの誰もいない部屋に帰ってしまったら、明日からの現実に打ちのめされてしまうかもしれない。
一夜限りの関係だからこそ、よく知らない佐藤だからこそ、小森は大胆になっていた。
小森にとっても酔った勢いでセックスを求めるなど初めての経験だった。
駅へと向かう2人の足音は一度止まり、そして別の目的に向かって再び動き始める。
見上げた先には、ネオンに輝くホテル街が広がっていた。
セックスのとき、男の背中を押すのは本物のセックステクニックである!
佐藤は決してリビドーによって小森に声をかけたわけではない。
ましてやナンパだと思われていたことは彼にとっては心外だった。
佐藤は、ただただ心配だったのだ。
破綻するような飲み方をしていた彼女。
どこか痛々しく、まるで泣いているようだった。
40代も半ばの佐藤にとって小森は魅力的な女性であったが、おそらく30代手前であろう彼女はどちらかというと可愛い部下のような認識だった。
だからこそ、彼女から誘って来たときは年甲斐もなく焦ってしまった。
そもそも佐藤は言うほどセックス経験が多くない。
下手ではないと思うが、テクニックに自信はなく、彼女を満足させる自信もなかった。
しかしその時、そんな佐藤の背中を押したのは、YouTube動画で観た〝あるSEXテクニック”だった。
女性をクリトリスで感じさせるには?
フレアスカートをたくし上げながら、細い太ももをなぞってゆっくりとショーツへと指を這わせる。
絹のように柔らかく真っ白い肌だ。
佐藤はすでに布越しにもアソコが湿っていることを期待したが、小森はそう上手い具合には濡れてはいなかった。
普段のセックスであれば胸を先に愛撫するのだが…
佐藤はこのとき下着越しに彼女のクリトリスに愛撫を集中させた。
小森のクリトリスを撫でるよう愛撫していく。
それに対して小森は少し大げさにビクンと肩を震わせる。
「んっ……」
ただ下着ごしだとマンコの形状や起伏自体がわかり辛い。
特に女性経験の多くない佐藤にとって、わずかな指先の感覚だけで下着ごしにクリトリスを見つけれうことは難しかった。
しかし、まるでココを触ってと主張するかのように、小森のクリトリス膨らんでくる。
その膨らみを触るたび、小森のお腹に当てていたもう片方の手のひらに、ビクッという反応が伝わってくる。
気持ちいい部分が擦れる度に、わかりやすく小森の身体は動くのだ。
自然と脚が開いてきて徐々に小森も身を委ね始める。
そしてクリトリスに指が引っかかるたびに、小森は小さく喘ぎ声を漏らし始めた。
そのタイミングで、佐藤は少しだけ湿り気の帯びてきたショーツをズラして人差し指を滑り込ませる。
佐藤は今度は直接クリトリスを擦り始めた。
「……っ、く……ん、ぁ……」
摘まんだり剥いたりはせずテンポはゆっくりと、それでいて一定に保ちながら辛抱強くクリトリスを擦り上げる。その動きは緩慢で実に単純だった。
本当にただ指でクリトリスを下からなぞっているだけだ。
ただひたすらに、同じ指の動きを反復させているだけだった。
ただそれだけのことだというのに、徐々に小森の反応は鋭敏になって指の動きごとに漏れる嬌声が段々と甘くなっていくのだ。クリトリスを弄る佐藤の指の動きに小森はゾクゾクとしていた。
「そこ、っ、なんで……ッ、ン、ぁ……ひぁ、ぁあ……」
左手から身をよじるようなを何度も感じる。
明らかに小森は感じ始めていた。
この声は男を悦ばせるための演技ではなく、自然と口から出たものだ。
次第に愛液が分泌されてきて、アソコを擦る度に押し殺した喘ぎ声よりもクチュグチュと水気のある音が目立つようになる。
アソコがジンジンと熱くなり、自然と皮が剥けてきた敏感なクリトリスをじっくりとしたテンポを保ちながら指触すると硬さを増していき、そしてヌルヌルとし淫靡な体液に塗れてくる。
グチュグチュとした音がヌチャとした粘度の高い音に変わって、次第に周囲に立ち込める匂いさえも濃くなってくる。
明確に限界が近づきつつあるメスのフェロモンの匂いだった。
一定のリズムで執拗に責めてくるクリトリスの快感に奥歯を噛みながら小森は顔を歪める。
彼女は男とセックスをして達したことがないという寂寥を感じつつも…
また、こんな佐藤のような赤の他人にはそう容易くイカされるわけがないという想いもあった。
快楽を求めながらも浅い一夜の相手に自らの淫乱を暴かれることを否定したがる二律背反を抱えながら、小森はただクリトリスの快感に酔いしれていく。
そしてどんどんと次第に声は抑えられなくなっていった。
歯で噛み殺そうにも嗚咽のように肺からせりあがる高くて素直な喘ぎ声が抑えられない。
それを隠そうとすればするほどに、余計に股を伝う愛液も筋も止め処なくなって僅かな光の残滓にヌラヌラと光っていた。このとき小森は、ほとんど抵抗感もなく股を広く開けて、されるがままの体勢になっていた。
もう小森はイクときのことを想像して自ら腰を同調させて動かすほどだった。
理性が解かれ普段の冷静さが喪失してしまい、本能で求める以外の我慢が効かなくなっていた。
彼女はこれまで本番のセックスですらろくな快感を味わったことがなかった。
気持ちいいと感じないことがないわけではないし不感症の類でもない。
多くは相手が独りよがりであったり、絶頂のタイミングが噛み合わなかったりと身体の相性には殊更縁がなかった。
なによりも小森が不満だったのは前戯が少ないことに関してだ。
少し濡れてしまえば指を入れて掻き回して、あとはイチモツを出し入れして……正直オナニーの方が全然気持ちいいと思っていた。
そう佐藤にクリトリスを責めらる、そのときまでは……
クリトリスの一点責め!そのポイントとは?
強すぎでもなく弱すぎでもない。
佐藤は少しずつ力加減を調整しながらビクビクと痙攣するように動く下腹部から、どれが最も気持ちいいのかを探ろうとしていた。そして、特に意識してクリトリスに引っかかりをつくるように愛撫をすると、彼女はとても素直に感じてくれた。
正直にいって、これまで佐藤は、愛撫に関していえば一定のリアクションばかりで手ごたえのないマンネリズムだとばかり思っていた。
しかし今は違う。
小森のイヤらしい反応や気持ちよさそうな表情を見て、佐藤自身も高ぶり興奮してしまっていた。
「ン、ぐぁ……佐藤、さ……ぁ、もヤバ、んっ……あ」
「イキそう?」
赤い顔を隠すように俯きながら小さく頷く。
時間にしたら五分も経っていないくらいのあっという間だ。
別段疲れるようなことをしたわけでもないのに小森はもうイクの寸前だった。
イキ顔と声を隠すために小森は腕を佐藤の首に絡めるようにしてキスを要求していた。
既にクリトリスの快感によってふやけきっている顔がどうにもエロく、佐藤は優しく唇を重ねると舌を入念に絡めながら持続的に指を動かし愛撫をした。
アソコは既にドロッとした愛液が糸を引いていて、シーツにいくつかの染みをつくっている。
切なそうにヒクついたマンコが絶頂への高揚を表していた。
指を動かす強さだけは変えずに、少しだけ刺激の仕方を変えてみる。
クリトリスの下から上に擦るような愛撫から、クリトリスの下側に指のはらを当ててブルブル震わせる動きに変えると、小森の身体は浮くように敏感に痙攣をして呼吸が乱れた。
身体の反応を読もうとしなくとも、気持ちいいのが丸わかりの反応だった。
充血してぷっくりと膨らみ固くなったクリトリスを一定の力、一定のテンポ、一定のスピード感の動作で弄る。
他にはどの性感帯にも触れてはいないというのに、それだけで小森は絶頂を果たしていた。
これが彼女にとって初めてのオーガズムだった。
そのとき彼女が感じたクリトリス愛撫の快感とは?
「ン、ふぁ……ィ、ぁ……ッ、く……く、イク、ぅぁ……――ッ、ん、ッ」
背筋が弓なりに沿って足が爪先までピンと張る。
彼女が絶頂している最中も佐藤は指を動かし続けて快楽を誘っていた。
電流が走ったような激しく強い感覚が脳を焼いて夢中にさせる。
小森は目の前が真っ白になるほどの浮遊感に戸惑いながらもしっかりとその絶頂を享受していた。
嫌なことが全部吹き飛んでしまうくらいの強烈な絶頂だった。
それも付き合ってもいない、出会ったばかりのよくも知らない男性によってもたらされていた快感だということが即座には受け入れがたい。
小森自身も自分がこれほど容易く他人にイカされるとは露ほども思っていなかった。
彼女の元カレも、その前の彼氏も、かつては愛情のある前戯をしてくれたし、佐藤よりもずっと長い時間をかけて愛撫をしてくれたこともあった。
それが不快だったわけではないし、気持ちよくなかったわけでもない。
ただ……物足りなかったのだ。
イクには到底足りない快感のために、彼女は過剰に感じているフリやイッた演技などをしなければならず、相手のプライドのことを考慮してばかりでは常にセックスは虚しい芝居ばかりだった。
どちらかといえば彼女にとって愛撫なんていうのは、むしろ男性を悦ばせるための手段だったのだ。
しかし、今は佐藤の指遣いによって呆気なくその凝り固まった前提が崩壊していた。
悦ばせるためではなく真に悦びを知った彼女の身体は、まだ冷めやらぬ興奮が高い体温を保ち続けていた。
「……ぁ、ッぐ、ぃ……は、ぁ……ッ」
絶頂したあとでさえ止まってくれない指の動きで小森は息をつく暇もなくそのままイカされ続けていた。全身がトロトロに溶けて、どこまでも弛緩してしまうような感覚だった。
彼女はただレーゾンデートルの確証を得るために気軽に佐藤を誘っただけで、見かけのパっとしない彼の手によってイケるとは到底思っていなかった。
快楽の波がとめどなく襲ってきて何度も彼女を絶頂へと運ぶ。
もう感じたくないと思っていても、自然と身体の方が反応してしまうのだ。
度々クリトリスの上側を擦る様に撫でられて、その焦れるように鈍い感触ですら全身を震えさせるほどの快感に感じる。小森の身体はもう完全に佐藤に支配されていた。
エピローグ~開発されたクリトリス~
「……――っつう……痛たたた、頭重っ……ここどこ?」
見事な二日酔いだった。
まるで銅鑼でも叩かれているかのように頭の中がガンガンする。
全身の倦怠感や仄かな筋肉痛は、三十路も差し迫った小森の身体には随分と堪えた。
差し込む日差しが眩しくて思わず目を細める。
大分服が乱れているし、頭痛に疼く頭をさすると寝癖も酷い。
バッグや財布などの貴重品だけはしっかりと持っていたが、おそらく昨日帰れなくなって泊まったであろうホテルの枕が合わず首を寝違えてしまった。
まったく難儀だ。かなり酔っていたせいか、昨晩のことを思い出そうとしてもよく思い出せない。
ただ、とても満たされた感覚だけがあった。
昨日はバーで強い酒を飲み明かして、それで……
「あ……時間! ヤバ、ど、どうしよ……とりあえずシャワー浴びて、ああそれから――」
視線を落とした瞬間に手首の腕時計に目が行って急に現実へと引き戻される。
もう出社時間もギリギリだった。玄関でぼうっとしている暇はない。
小森は慌てて飛び上がるように起きると急いで支度を始める。
トチった翌日に遅刻なんてしたらそれこそ洒落にならない。
ブラウスは皺くちゃだし、バーで移ったのか煙草の匂いだってする。
スカートについては水のようなもので少し濡れていた。
今日は関係各位への謝罪行脚のために少しでも身なりを整えて出社するつもりが、これじゃあ一旦家に戻る時間すらない。
小森は烏の行水のように頭からシャワーのお湯を被って絡まった寝癖をなんとか梳かしながら身体の汗を流す。
「んっ…」
なぜだろうか。こうしていると不思議と妙に目が冴えてくる。
四肢を伝う雫の感触をここまで敏感に感じたのは初めてだった。
起き抜けだからちょっと神経が過敏気味になっているのだろうか。
生暖かい温度のシャワーを当てながら身体を指でなぞって洗う間も、僅かな刺激にすらクリトリスは密かに疼いていた。